歯周病と全身疾患
歯周病は、歯周病菌により歯ぐきに炎症が起きる感染症で、悪化すると歯が抜け落ちてしまうことはよく知られています。しかし歯周病が怖いのは、お口の中だけに留まらず、その影響は全身の健康にも大きく関わっていると言われています。今回は歯周病と全身疾患の関係についてお話したいと思います。
■歯周病とは
毎日のように歯磨き粉のCMで聞く歯周病は、昔は歯槽膿漏と呼ばれていました。現在では歯周病の呼び方が一般的ですが、症状はどちらも同じです。
歯周病は、プラークに棲みついた歯周病菌が出す毒素によって歯ぐきや歯槽骨といった歯周組織に炎症が起きる病気です。
歯周病は虫歯のように痛みを感じることがなく症状が進行するため、自覚症状を感じる頃にはかなり症状が進行しています。歯周病の初期症状は歯ぐきの腫れと出血です。中度歯周病に進行すると歯ぐきの腫れや出血に加え、口臭がきつくなる、歯ぐきが下がって歯が長く見える、歯を支える歯槽骨が吸収されはじめるために歯が少し揺れ動くといった症状が起こり始めます。重度歯周病になると膿が溜まり、さらに口臭がひどくなります。歯ぐきが腫れて食べ物が噛めなくなる、歯槽骨が吸収されて歯がグラグラするといった症状が出て、最終的には歯が抜け落ちるか抜歯となり、歯を失う結果となります。
■歯周病と全身疾患の関係について
お口の中に起こる歯周病の症状をお伝えしました。では次に、歯周病が全身の疾患とどのように関わるのかについてお話を進めてまいります。
歯周病と関わりが深い全身疾患には、次のものが挙げられます。
・糖尿病
・心臓疾患
・脳梗塞
・誤嚥性肺炎
・骨粗鬆症
・早産および低体重児出産
歯周病になると、歯肉や歯周ポケットから歯周病菌が侵入し、血管の中に入り込んで様々な悪影響を与えます。
特に糖尿病は歯周病と関わりが深いと言われており、糖尿病が悪化すると歯周病も悪化する傾向が強く、歯周病が改善されると糖尿病の状態も良くなるなど、相互関係にあることが知られています。歯周病は炎症性物質を作り出すため、糖の代謝を妨げ、肝臓の働きを鈍くさせてインシュリンが作用しにくくなってしまいます。このことからもわかるように、歯周病が悪化するとインシュリンがうまく分泌されず、糖尿病が悪化してしまうと考えられています。
歯周病は心疾患や脳梗塞にも関わっていると報告されています。歯槽骨から入り込んだ歯周病菌が心臓や脳へ運ばれていきます。そして血管の壁に歯周病菌が付着することで血栓を作り出す異常な組織が形成されます。血栓が作られると血流が悪くなり、動脈硬化や脳梗塞などを引き起こしてしまいます。歯周病菌は、この異常な組織の形成に関わっていると言われています。
誤嚥性肺炎も、歯周病が深く関わる病気の一つです。特に高齢者や寝たきりの方などは嚥下機能が衰え、誤って気管支に唾液や食べ物が入り込んで肺炎を起こすことがあります。これが誤嚥性肺炎でえすが、歯周病に罹患している人が誤嚥すると、肺に入り込んだ歯周病菌が肺炎を起こすリスクが高まってしまうのです。
骨粗鬆症は、骨密度が少なくなる病気で、特に女性ホルモンが関係していると言われており、閉経後の女性に多く見られます。
骨粗鬆症の方が歯周病になると、顎の骨が急速に吸収されると言われています。さらに歯を失ってしまうと噛む力が衰えてしまうため、カルシウムなどの補給が難しくなり、さらに骨が弱く脆くなってしまいます。
妊娠中の女性が歯周病になると、早産になるリスクが高まります。歯周病菌は炎症を引き起こすため、子宮収縮を起こしてしまいます。早産になると、必然的に赤ちゃんは低体重で生まれてしまいます。早産で生まれた赤ちゃんは正期産で生まれた赤ちゃんと比べて肺などの臓器が未熟なため、慎重に経過観察を行う必要があります。
■歯周病を予防して、歯と全身の健康を守りましょう
歯周病と全身疾患についてお話をしました。歯周病はお口の中だけでなく、体の健康にも大きく関わると言われています。体の健康はお口の中から始まります。歯周病を予防し、健康な毎日を送るよう心がけましょう。
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