歯周病治療
こんな症状はありませんか?
□ 朝起きた時に口の中がねばねばする
□ 歯磨きすると歯ぐきから血が出る
□ 歯ぐきが腫れている
□ 口臭が強くなってきた
□ 歯ぐきが下がって歯と歯の間に食べ物がよく詰まる
□ 歯がグラグラしてきた
上記の項目に一つでも当てはまった場合、歯周病(歯槽膿漏)になっている可能性があります。
このような自覚症状がない場合でも、日本人の20歳代では約7割、30~50歳代では約8割、60歳代では約9割の人が歯周病にかかっているという調査結果があります(※)。
※一般社団法人日本生活習慣病予防協会:http://www.seikatsusyukanbyo.com/statistics/disease/periodontal/
たとえ自覚症状がなくても、成人になれば常に歯周病で歯を失ってしまうリスクがあることを意識して、予防や早期発見のために定期的に歯科医院で検診を受けられることをお勧めします。
当院のこだわる歯周病治療の内容
「1本でも多く歯を残す」ために初期段階から重度のものまで治療します
すでに日本人の国民病レベルにまで患者数の増えている歯周病は、日本人が歯を失う原因の第一位でもあります。
虫歯の多くは、歯ぐきから露出している「目に見える」部分で進行するのに対し、歯周病は歯ぐきに隠れた「目に見えない」部分でほとんど自覚症状なく進行するので、たとえ無症状であっても重症化しやすく、治療開始が遅ければそれだけ歯を残すことが難しくなります。
歯周病は、口の中に生息している歯周病の原因菌が増殖して歯周組織を破壊していくことによって起こります。歯周病菌を根絶することはできないので、歯周病を「完治」させることはできません。
そこで虫歯の予防と同じように、
- 日頃から丁寧なセルフケアで原因菌の温床になるバイオフィルムを取り除くこと
- 歯科医院で定期的にセルフケアでは取り除けないバイオフィルムやプラーク、歯石をクリーニングすること
- 定期健診を受けて病気を早期発見し、歯が残せるようにメンテナンスを継続すること
が目標になります。
生え代わりのない永久歯を、できるだけ長く1本でも多く保つために、当院では予防歯科に重点を置いた治療を行っています。
健康な歯はできるだけその状態を保てるように、また、残念ながら歯を失ってしまってもできるだけ元の状態を回復し、「噛める喜び」を実現できる歯周病治療を行います。
歯周病の進行具合を検査で把握し治療計画を立てます
歯周病が疑われる場合には、歯周ポケットの深さを測定して歯周病の進行具合を調べます。
検査は「歯周ポケットプローブ」という、先端が丸くなった細い針のような計測器を使って行います。わずかに痛みを感じられる方もいますが、歯周ポケット底部を軽く触れる程度の強さで行うので、ご安心ください。
検査の結果を基に、今後の歯周病治療の説明をさせていただきます。
虫歯の治療やかぶせ物の治療が目的で来院された患者様は、直接関係ない歯周病治療が必要となると当惑される方もおられます。
しかし、いくらよい虫歯治療やかぶせ物の治療を行っても、その土台となる歯周組織の病変を放置したままでは、数年後に重症化した歯周病が原因でせっかく治療した歯を抜かなくてはいけなくなることもあるのです。
当院では歯周ポケット検査以外にも、レントゲン写真、歯列模型などを使ってお口の中の状況をわかりやすく説明させていただいております。気になることがあれば遠慮なくご質問ください。
歯周病治療は虫歯治療の前か並行で行います
虫歯治療で歯のつめ物、かぶせ物などの治療を行う場合、治療する歯や歯周組織だけでなく、隣り合う歯やかみ合っている歯など、口の中の多くの歯や歯周組織の状態が影響してきます。
かぶせ物は歯と歯肉の境目の部分が隙間なくぴったり合っていないと、かぶせ物が外れてしまうことや、歯とかぶせ物の隙間から虫歯になる恐れがあります。また、歯とかぶせ物の境目が露出すると見た目も悪くなります。そのため、かぶせ物治療をする前に、歯ぐきの状態を整えて精密な型を取れるような治療を行います。
また、つめ物やかぶせ物の治療を行う歯がグラグラしていると、つめ物やかぶせ物をセットしても、歯がグラグラすることで隣り合う歯と歯の間に食べ物が詰まりやすくなったり、かみ合わせの高さに違和感が出ることがあります。
このようなことを避けるためにも、当院では虫歯治療に加えて必要な方に歯周病治療を実施させていただいています。
歯周病治療は歯を守るために大切な治療ですので、ご理解ご協力をお願いします。
歯周病はどんな病気なのか
特徴1.歯周病菌の感染によって起こり、歯を支える歯槽骨を溶かしてしまう病気です
歯周病は、歯周病の原因菌が歯と歯ぐきの境目の歯肉溝という溝で異常増殖するところから始まります。
歯と歯ぐきの境目のごく浅い健康的な歯肉溝で歯周病菌が異常増殖すると、細菌の発生する毒素と歯肉に起こる炎症の影響で、歯と歯肉の付着部分が徐々にはがされて歯周ポケットという深い溝になります。
歯周病の原因菌は酸素を嫌う嫌気性菌という種類の菌なので、酸素の少ない深い歯周ポケット内でさらに増殖を重ねて歯周組織と歯周組織を支える歯槽骨を破壊していきます。
不規則に破壊されていく歯槽骨の状態が、あたかも骨が溶けていくように見えることから「骨が溶ける」と表現されるのです。
歯周病は歯周組織と歯槽骨は破壊していきますが、虫歯のように歯を破壊していくわけではありません。歯の周囲の歯周組織と歯槽骨が破壊されて徐々に歯ぐきも下がっていき、最終的に歯槽骨の支えを失った歯が抜けてしまいます。
失われてしまった歯槽骨は元に戻らず、周囲の歯や全身の健康にもその影響が及ぶので、早めに対処することが大切になります。
特徴2.目立った自覚症状なく進行します
日本人の多くがすでに歯周病を発症しているにもかかわらず、実際に治療やメンテナンスを行っている人が少ないのは、「自覚症状がほとんどない」ところにあります。
すでに述べたように、歯周病によって失われた歯槽骨は元に戻りません。そのために、自覚症状の有る無しに関わらず、できるだけ早い段階で歯周病の兆候をとらえ、ごく初期のうちに発見して治療を開始することが大切です。
自覚症状が乏しいだけに、歯科医院での定期検診や予防歯科のメンテナンスが重要なのです。
特徴3.歯周病は成人期に歯を失う原因の第一位
歯を失う原因の90%は虫歯と歯周病ですが、成人期に限れば歯周病が第一位になっています。
歯周病で歯を失うと、保険診療では失われた歯を補うための入れ歯やブリッジなどの治療を行います。けれどもこれらの人工歯は、もともとの自分の歯よりも噛む力が弱いので、使用感に不満を覚える方も少なくありません。
より自分の歯に近い自然な使用感を求めてインプラントなどの自由診療の治療を行うと、高額な費用が必要となります。
歯周病を進行させて歯を失うと、治療に要する時間や費用、生活の質や全身の健康などの大きな代償を払うことになってしまいます。
特徴4.歯周病が口臭の原因になることもあります
飲酒やにおいの強い食品による一時的な口臭、全身疾患の症状として現れる口臭を除くと、口臭で治療が必要とされるものの9割近くが歯周病由来のものです。
歯周病の特徴である歯周ポケット内にたまったプラークや歯石、細菌群から分泌される物質が悪臭を発して口臭の原因となります。
歯周病治療で歯周ポケット内のプラーク、歯石、バイオフィルムをきれいに取り除くと、歯周病が原因の口臭は著しく改善します。
歯周病(歯槽膿漏)、歯肉炎、歯周炎の違い
歯科治療では、歯の周囲の組織に起こる病気を「歯周病」として扱い、その進行度の違いで呼称を変えて状態を表します。
歯肉炎
歯肉炎は炎症が歯肉のごく浅い部分に限局して起こっている状態です。歯ぐきに軽い腫れがあったり歯磨きする時に出血しても、深い歯周ポケットができたり歯槽骨の破壊は始まっていないので、比較的簡単な処置で進行を止められます。
歯周炎
歯肉炎がさらに進行すると深い歯周ポケットができ、歯周炎と呼ばれる状態になります。歯周炎がさらに進行すると歯槽骨が溶け始め、歯ぐきが腫れたり、膿が出てきたりします。この状態を歯槽膿漏と呼ぶこともあります。
歯周病の原因菌は全身疾患とも深い関係があります
歯周病菌が起こす病気は口の中だけにとどまらず、全身に及びます。
歯周病菌が歯周組織以外で引き起こす主な病気は、以下のものが知られています。
糖尿病 | 歯周病は糖尿病が悪化すると症状が悪化し、糖尿病が改善すると歯周病も改善するという、切っても切れない関係にあります。歯周病の原因菌や分泌される毒素はインスリンの抵抗性を上げて血糖値のコントロールを悪化させるので、糖尿病を進行させます。 |
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心臓疾患・動脈硬化 | 血管内に侵入した歯周病菌は頸動脈や冠状動脈に血栓を作りやすくするので、心筋梗塞や脳梗塞の発症リスクが高くなります。 |
誤嚥性肺炎 | 歯周病の原因菌が含まれる唾液やプラークを誤嚥して肺炎を起こすことがあります |
低体重児出産 | 歯周病菌から分泌された炎症物質に刺激されると、血液中のサイトカインという物質の濃度が上昇します。妊娠中の女性の体内で妊娠37週未満に血液中のサイトカイン濃度が上昇すると、それを「出産の合図」と勘違いして子宮筋を収縮させる合図が送られてしまって早産となり、正期出産よりも体重の少ない低体重児出産につながります。 |
自然治癒のない歯周病を放置することは、さまざまな病気の原因になる爆弾を常に抱えているようなものです。歯と全身の健康を守るためにも歯周病の早期発見・早期治療は大切なのです。